松谷健二先生について・その2 (2008年7月22日公開)

===素顔の松谷先生って、こんなかた♪===




2007年8月、松谷先生のご家族様が、当ひずみ庵を見てくださいました。
そして、読者と共有できる思い出のいくつかを、ネットの片隅にとどめておきたいとのご依頼を受け、及ばずながらこのページを製作しました。

くしくも2007年は「世界SF大会」が日本で開催された年。 (8月30日~9月3日・横浜にて)

時期を合わせて出版された『日本SF・幼年期の終わり』(早川書房編集部編)には、松谷健二先生のエッセイも収録されています。
ハヤカワ・オンラインで購入できます♪)

日本のSF界に、なくてはならなかった存在・・・
世界最長のSF・「ペリー・ローダン」シリーズ(ドイツ)の日本語訳を27年間・234冊!
この大偉業をなしとげてくださった、松谷先生。

その知られざる素顔など、エピソードをいくつかご紹介しましょう☆


1: とっても動物好き

ローダンシリーズの「あとがきにかえて」にたびたび登場した柴犬のほかにも、松谷先生のおうちには、リクガメとか、ジュウシマツ、ウズラ、シマリスが飼われていました。

大きなゾウガメも飼われていたのですが、専門知識を持つかたに譲られたとのこと。
それは松谷先生が急逝される前の年のことでした。


2: もちろん植物もお好き


とりわけ、山の自然の花がお好きだったようです・・・ヒメサユリ、コマクサ、カタクリなど。

毎日愛犬の散歩をして、近くの山にカタクリなんかが咲くのを楽しみにされて。

一度だけ私が蔵王山にご案内いただいた時に、「植物オタクがいるとやかましい」という笑い話になりました。
「私の知り合いのグループなんか、ラテン語の学名が飛び交うんですよ・・・(ーー;)」
と私が話すと、先生はひとこと:

「そういうのは、口に洗濯バサミを・・・」  ミ(o_△_)o

3: グルメな一方で、食べ物を大切に


松谷先生は東京のお生まれで、ある財界人のご次男とのこと。
親しくされていたご親戚は大学教授、そこの蔵書を読み漁って少年時代をすごされたそうです。

生家は洋館で、戦災で消失。 当時から食事は洋食であったらしい。

だから松谷先生は、フランスパンにバターとレバーペースト、もしくはバターとマーマレードを塗ったのをレモンティと一緒に、というのがお好きだったとのこと。

ご学友のかたたちの証言では、「ライ麦のはいったドイツパンにバターとレバーペーストを分厚く塗って、レモンティと一緒に頬張っていた」。

そして森永の「チョイスビスケット」もお好きで(笑)、ワインは甘口のドイツワインに肴は青カビチーズを白カビで包んだものがお気に入り♪
そしてハイドンの弦楽四重奏曲なんかを聴きながら歓談。

・・・う~ん、なんとも貴族的な雰囲気が☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆

←大倉陶園のティーカップ

上の写真はご愛用の「大倉陶園」のティーカップ・・・森の鹿を描いたもの。

先生は今で言う「スイーツ」が特にお好きで、近年では地元のおいしい洋菓子のお店2軒を御用達でした。

夕食後の「宵」の時間に一番、お仕事の効率が上がったという先生、その一助となったのは甘いものかも?
いや、あくまで一助ですけど。(笑)

松谷家ではよく夜の八時か九時ごろお茶をしていて、紅茶とケーキでホッと一息♪

こういう時間の『お茶』はとても楽しいもので、よくご近所のお友達ご夫妻を招かれていたとのこと。


・・・なんとアカデミックでお洒落なヨーロピアンテイスト☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆

            ←マイセンのティーカップ 

こちらは同じくご愛用のマイセンのティーカップ。

でもその一方で、松谷先生は食べ物をとても大事にされるかたでした!

食糧難の時代には、ご自分で畑を耕してソバを作って、ご家族と共にソバガキを食べたという話がローダンシリーズのあとがきにありました。
でも苦労して作ったソバガキは、あっという間になくなったそうでした。

時代がくだって、子供さんたちが給食のパンを残して持ち帰ると、パン粥にリメイク☆
(味付けは、やっぱり洋風かな?)


4: お好きな音楽は♪


洋風のおうちで育たれたので、やっぱりクラシックですね~♪☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆
戦争で千葉へ疎開して、そこから東京外国語大学に通われた時に、名曲喫茶で憩いの時を過ごしていらっしゃいました。

昔は名曲喫茶というものがあちこちにあって、レコードコンサートが開かれていたんです。
そこで出会ったのが、ある人の本・・・
クラシック音楽と文学に造詣の深い、東北大学独文科教授の書かれたものでした。

東京外語大を卒業してから、仙台へ行き、東北大の独文科に入られた(もちろん卒業も)のは、このご縁。
大学の正門前の名曲喫茶2軒に足しげく通われ、お仲間と外国からクラシック演奏家を招いたりも!

 蔵王山にて

5: ドイツからのプレゼント

ご家族様やファンにとって、本家ドイツのペリー・ローダンシリーズからの思いがけないプレゼントがあるとわかったのは、2003年8月のことでした。

『宇宙英雄ローダンシリーズ 第292巻 アラスの使命』
(フォルツ&フランシス/天沼春樹訳、ハヤカワ文庫)

この話の登場人物のひとりに、「ケンジ・マツタニ」という名前が☆

「二百の太陽の星」からきた医師という役どころなので、松谷先生の人物像とは関係ないのですが、本家の作家さんが敬意を表してくださったのでしょう。


 模型飛行機いっぱいの仕事場

6: そのほか

松谷健二先生は、けしてぜいたくをなさらないかただったみたいです。
こだわりの銘品のティーカップ、航空機のフィギュアなどのささやかなことを除いては・・・。

そしてローダンシリーズの印税などから、ユニセフに寄付をしておられたとのこと。
勤勉で誠実な、まっすぐな生き方、そして弱き者・小さき者の味方であることは、ご作品からも偲ばれます。

世の中が複雑になってしまった現代、私たちはともすれば、自分の歩む道が見えなくなってしまうような不安を感じることも。

そんな時、目を閉じれば先生の背中がふと見えて、お声を聞く想いがするのです、

「・・・こっちだな。 さあ、行こう♪」



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